Google for Education と AI : 2025 年の振り返りと学びの深化
2025 年は、教育における AI の活用という未来が現実のものとなりました。Google for Education は今年、150 以上の新機能やアップデートを発表しましたが、私たちの根底にある信念は変わらず「学びの核はテクノロジーではなく、人間同士の繋がりにある」ということです。AI の役割は、その繋がりを置き換えるのではなく強化することだと考えています。本日は、日本の教育現場から共有いただいた素晴らしい実践事例とともに 2025 年を振り返ります。
Google の学習ツールは、最高水準の学習科学に基づいて構築され、目的に沿って設計されています。これらを支える AI モデルは、教育原理に基づき、学習の専門家とのパートナーシップを通じて開発されることで、真の学習体験を実現します。
- Gemini によるガイド付き学習: 単に答えを提示するのではなく、学習者が自ら答えに辿り着けるよう対話を通じて導きます。また、Google 検索をより対話的に活用することで、疑問を感じたその瞬間に学びを深めることができます。
- NotebookLM による深い理解: 信頼できる情報源を活用し、複雑なコンテンツをクイズやフラッシュカード、さらには没入感のある音声・動画体験へと変換します。一人ひとりのスタイルに合わせた、より効果的な学習を支援します。
- Google Classroom の AI ツール: すべての教員が無料で利用できる AI ツールは、まるで専属のアシスタントのように、授業計画の作成や管理業務をサポートします。これにより、先生方は生徒の意欲を引き出し、一人ひとりに寄り添うという、教育において最も重要な役割に集中できます。
AI と歩む新しい教育の実践
Gemini や NotebookLM を活用した革新的な取り組みが次々と生まれました。ここでいくつかご紹介します。
学生と教員、そして AI の 3 者で創る。立教大学の舘野先生が描く次世代の学びのデザイン
立教大学経営学部のコアカリキュラムである「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」の主査をしている舘野先生は、ご自身のゼミで積極的に Gemini を活用しています。舘野ゼミでは、約 40 名の学生が 9 チームに分かれ、実際の企業の課題解決に取り組む大規模なプロジェクト型授業を行っています。
今年度から舘野先生は、課題検討に有用な情報を読み込んだ「Gems」を作成し、学生に配布しました。これまで、限られた講義時間内で各チームへのフィードバックできるのは、多くても週に約 20 分ほど。しかし、Gems の導入によって、学生はプランの論理的な妥当性や実現可能性など必須の観点を Gemini であらかじめ質問できるようになり、各学生の個性を活かすことを考えた、先生らしいフィードバックに時間を活用できるようになりました。学生からも「”先生に聞こう”で止まっていた議論が、AI に相談することで先に進められるようになった」「夜でも Gemini なら気兼ねなく相談できた」「自分たちの発表の音声やスライドをアップロードし、Gemini に質問することで、自分たちの進捗や課題が明確になり、改善できた」という前向きな声が上がりました。
「今後は、学生対教員という 2 者の関係性から、学生と教員と AI の 3 者の関係をいかに設計するか、工夫することでより充実したプログラムになると考えています。それによって、私達の学びがどう変わっていくのかという実験が、これから始まっていくのではないでしょうか。」と、舘野先生は語ります。
舘野先生と立教大学の学生たち
生成 AI と教員の知恵で、教育をもっと面白く!
福岡市教育委員会 指導部 教育ICT推進課 主任指導主事 清水 理様
生成 AI は、教員の業務を効率化するだけでなく、子どもたちの学びを深める力を持っています。教育現場への導入には 2 つのステップが必要だと私は考えています。
まずは校務での活用。AI の利点や注意点を理解して業務を自動化し、教員が子どもたちと向き合う時間を増やすこと。
次に授業への活用。個別最適化や探究学習などで、AI の特性をどう生かすかが鍵となります。
福岡市には ICT 活用に積極的な教員が多くおり、Google Apps Script による業務効率化研修に多数参加がありました。このような教員の主体的な取り組みが、教育のイノベーションを加速させる基盤となっています。生成 AI の価値を最大化するのは教員の知恵と創意工夫です。これこそが、未来の教育を形づくる原動力になると確信しています。
福岡市立草ヶ江小学校 教頭 西畑 英彦様
そう遠くない将来、生成 AI が、子ども達の「自律的な学び」を支える強力なパートナーとなることを確信しています。そんな未来を見据え、本校では福岡市が導入した Gemini やNotebookLM を活用し、「教員の働き方」と「授業の質」改革への挑戦を続けています。 当初、現場には「未知への不安」がありました。そこで「習うより慣れろ」を合言葉に、独自のガイドブック「Gemini の取説」や、気軽に参加できる希望者研修で心理的な壁を取り払いました。
効果は劇的でした。今ではプログラミング未経験の教員が、AI との対話で作文指導ツールや時間割アプリを自作するほどの熱気が生まれています。次なる挑戦は、児童自身による活用です。子どもたちが AI をパートナーとして使いこなし、自律的に学ぶ未来を目指して、新たな実践を模索していきます。
福岡市草ヶ江小学校での教員研修の風景
教員研修資料
時間割アプリ
生成AIと拓く、教育の再定義。「一歩踏み出す不安」を「確信」へ変える、相模原市流「活用の羅針盤」
相模原市教育委員会 教育 DX 推進課 木原 智裕様 須藤 雄紀様
生成 AI という新たな選択肢を前に、いま現場には期待と迷いが交錯しています。「使ってみたい、けれど一歩が踏み出せない」。そんな現場の葛藤は、子どもたちの学びを真剣に考える誠実さの証だと捉えています。Gemini for Education の年齢制限撤廃という転換点を機に、相模原市は現場の迷いを「進化への確信」へと変える決断をしました。
私たちが目指すのは、守りの IT 活用ではなく、先生の日常をよりクリエイティブな時間へとシフトし、子どもたちの創造力を最大化させる教育の再定義です。策定したガイドラインは、単なるルールではなく、未知の領域を切り拓くための「羅針盤」。活用推進サイトや事例集、さらに教材研究を強力にバックアップする NotebookLM の教科別ボットや独自プロンプトといった専門性を最大限に引き出すためのリソースを次々と実装しました。
すでに小学校の教室からも、従来の枠を超えた新しい活用の萌芽が次々と現れています。本市の先生と子どもたちが持つ底知れないポテンシャルを、私たちは信じています。だからこそ、教育委員会も伴走者として学校現場へ飛び込み、共に汗をかきながら未来を切り拓く道を選びました。
今はまだ、スタートライン。この整えた環境を活用し、教育の常識を鮮やかにアップデートしていく。世界が驚くような学びの景色を、ここ相模原から創り出していきます。
相模原市立学校における生成 AI 利活用ガイドライン
生成AI活用アイディア集
SAGAMIHARA生成AI活用推進サイト
指導案自動作成Gem
教材研究サポートサイト(教材factoryLM)
2026 年に向けて
AI の可能性を引き出すためには、教育者の皆様との積極的なパートナーシップが不可欠です。Google for Education では、教育現場での AI 活用ガイド や小中学生のための Gemini パスポートといった、AI を活用するためのリソースも提供しています。また 2025年を振り返るガイド では、Google for Education に関する150件以上の発表内容を詳しくご紹介しています。
2026 年も、Google for Education は、日本の教育者の皆様と共に学びの未来を考え、テクノロジーの力で支援していきます。