Google AI for Japan: AI 人材の育成と技術活用促進を目指して
医師による疾患の早期発見を助けたり、障害のある方を支援したり、また、災害復旧支援など社会のために、AI 活用が有効な事例が増えています。たとえば、国立がん研究センター東病院は、がんゲノム医療(プレシジョン・メディシン)におけるゲノム解析プロセス短縮を目指した AI モデル開発の研究をされています。同モデルは、病理画像を用いて遺伝子異変を推測するもので、今春には 9 割を超える精度を達成されました。
私たちは、日本が社会的に困難な問題に立ち向かい、様々な課題の解決に挑戦する上で、AI という技術が貢献できる可能性は無限に広がっていると考えています。そこで本日、Google は「Google AI for Japan」を発表します。この新しいプログラムは、次世代の AI 人材育成を支援するとともに、ビジネスや社会課題解決に向けた AI 活用促進、さらに国内の AI 研究への貢献を目的としています。
日本の次世代 AI 人材の育成を支援
まず、もっとも重要な取り組みとして、次世代の AI 人材育成支援を目的に、研究助成金をはじめ、フェローシップ・インターンシップ プログラム、さらに教材・ツールを提供します。今回、 AI 研究を推進されている 6 名の研究者を対象に、それぞれ 5 万米ドル(500 万円相当)の助成金を提供します。今回、受賞される研究者の皆様は以下の通りです(五十音順)。
- 国立情報学研究所 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 教授 山岸 順一 様 「頑健かつ汎用的なニューラルソースフィルタモデルの研究」
- 京都大学 情報学研究科 教授 河原 達也 様 「意図のモデル化を用いた End-to-End 音声言語理解と対話生成 」
- 東京工業大学 科学技術創成研究院 教授 奥村 学 様 「単一文書要約としての文脈アウェア文圧縮」
- 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 教授 杉山 将 様 「限られた情報からの機械学習」
- 東北大学 大学院情報科学研究科 システム情報科学専攻 教授 乾 健太郎 様 「知識ベースとしての言語モデル:知識の表現・獲得・検索・推論の統合に向けて」
- 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授 中村 哲 様 「視覚聴覚情報を統合するマルチモーダルスピーチチェーンの研究」
上記に加え、Google では、東京大学で情報科学を学ぶ学生に向けた AI の授業を支援している他、東京オフィスで Google の AI 研究者やエンジニアと共に研究するフェローシップやインターンシップ プログラムを展開しています。さらに、開発者の皆さんを対象に、機械学習の初心者からエキスパートまで幅広いトレーニングも提供しています。これらのトレーニング プログラムは大変ご好評をいただいており、たとえば、機械学習のトレーニングを無料で提供する「ML Study Jams」には、2019 年だけで 4,800 人を超える日本の開発者が参加しました。また、機械学習に特化したイベント「 Google Developers ML Summit 」にも全国から多くの開発者が参加しており、明日開催を予定している ML Summit にも 600 人以上が来場する予定です。
また、もう少し ”未来の” AI 人材を育成する施策として、小学 5 年生〜中学生を対象にした教材の公開も行っています。これは、文部科学省、総務省及び経済産業省が今年 9 月に実施する「未来の学び プログラミング教育推進月間」の協力企業として参加しているもので、教員の先生方が簡単に AI の仕組みや開発を授業に取り入れることができる内容となっています。
Google Developers ML Summit Tokyo の様子
日本における AI 研究への貢献
2018 年 4 月、東京オフィスに AI 研究者のチームが発足して以来、同チームは様々な研究成果を発表してきました。これらには、強化学習の基礎研究や日本語の高低アクセントのための音声モデリング、ニューラル機械翻訳など、様々な研究テーマが含まれており 10 本以上の論文として成果を公開しています。Google が今年 4 月に発表した End-to-End の音声翻訳モデルの開発には、東京オフィスに勤務する研究者も参加しており、モデル開発に大きく貢献しました。さらに、同チームは日本の学術機関とも協力して研究活動を行っており、国立情報学研究所の研究者による「古典文学の分析への機械学習技術の応用」に関する研究はその一例といえます。
日本のビジネスや社会的課題の解決における AI 活用を支援
AI ツールは、日本中の様々な分野で問題解決のためにすでに活用が始まっています。たとえば、福島県南相馬市は、テクノロジー企業であるエアロセンス株式会社と協力し、除去土壌の仮置場の安全性管理のために、Google のオープンソース機械学習プラットフォーム TensorFlow を利用しています。
Google は、AI が医療、農業、製造をはじめとする分野で、多くのビジネス課題や重大な社会的課題を解くための強い味方になると考えています。Google AI for Japan プログラムの 3 本目の柱は、社会にとって重要な課題に AI を活用できるようにするための支援です。
Google では、機械学習プラットフォーム TensorFlow のオープンソース化に加え、Google Cloud AutoML、Cloud TPU、Cloud AI API などの各種 AI 製品をはじめとするツール、トレーニング、サポートを Google Cloud を通じて開発者や事業者の皆さまに提供しています。 2018 年には、Google の AI や機械学習エキスパートと協力してビジネスを革新するための Advanced Solutions Lab (ASL) を開設し、日本中の企業が AI によるビジネス上の課題解決に取り組めるよう、積極的なコラボレーションを行っています。
AI 活用の推進においては、ツールやリソースを自由に利用できる環境整備はもちろんのこと、今後、日本が直面する様々な社会的課題の解決に向けて、意欲的な研究の支援に加え、様々な機関との協力が重要だと考えています。日本には、長年に渡る優れた研究と教育の伝統があり、成長を続ける活発な機械学習コミュニティが存在します。AI が真に社会に有益な技術として日本に貢献できるよう、今後も開発者、企業、学術機関等と協力して参ります。