大胆かつ責任ある AI への取り組み
AI に対するアプローチは、大胆でありつつも責任あるものでなければならないと Google は考えています。それは、 AI 原則に基づいて課題に対処しながら、社会への貢献を最大化する方法で AI を開発することを意味します。両者は得てして相反するものですが、それらを生産的な形で受け入れることは可能であり、そうした姿勢こそが重要であると私たちは信じています。開発の初期から責任を持って取り組むことが、長期的に革新性を保ち続ける唯一の方法です。
Google は、世界中の人々が利用する製品、人々に利益をもたらす科学の進歩への貢献、社会的課題の解決に AI を活用しています。
Google 製品において
AI は、Google マップ、Google 翻訳、Google レンズなど、すでに数百万人(場合によっては数十億人)の人々が利用する多くの製品に組み込まれています。そして現在、私たちは AI を活用して、Bard で人々の創造性を高めるサポート、Workspace ツールで生産性の向上、Google 検索のSearch Generative Experience(日本未対応)で情報にアクセスする方法を変革していきます。また、Google Labs では、いくつかの有用な初期段階の実験などについて紹介しています(日本未対応)。
社会的課題の解決に向けて
Google は、AI を気候変動への適応と緩和に活用しています。洪水予測を現在 20 か国以上で提供し、山火事の境界をリアルタイムで追跡し、また往来の交通量と渋滞などの一時停止を減らすことで炭素排出量の削減に貢献しています(日本未対応)。Google では、AI を妊産婦ケア、がん治療、結核スクリーニングなど医療にも応用しています。最近では、臨床医の役に立つツールとなる新しい大規模言語モデル、Med-PaLM を発表しました。データ コモンズは、サステナビリティから医療、雇用、そして経済に至るまでの主要な社会的課題へアプローチするにあたり、数百のソースからのデータを整理し多くの国々に向けて情報を提供するシステムです。今年後半には、Bard を通じて提供する予定で、それにより利便性が向上するでしょう。
AI を活用した研究
AI は、物理学や材料工学、医療といった社会に貢献するさまざまな分野において、科学者によって活用されています。たとえば、Google DeepMind の AlphaFold プログラムは、科学的に知られているカタログ化されたタンパク質のほぼすべてである 2 億個のタンパク質の 3D 形状を正確に予測できます。これは、わずか数週間でほぼ 4 億年分の研究進歩に相当する成果です。AI はまた、世界中の人々がどこにいても情報にアクセスできるようにするためにも活用されています。たとえば、400 以上の言語で訓練されたユニバーサル スピーチ モデルを使用して、世界で最も話されている 1,000 言語に対応する AI モデルを構築する取り組み「1000 Languages Initiative」が含まれます。
課題
このような大胆な進歩はワクワクするものですが、AI はまだ発展途上の技術であり、やるべきことがまだ多くあることを理解しています。Google 内の研究や外部の研究で明らかにされているように、AI は不公平な偏見などといった既存の社会的課題を悪化させる可能性があり、AI がより高度になり、新たな用途がでてくることで、また新たな課題が提起される可能性があることを認識することも重要です。だからこそ、2018 年に確立した AI 原則に基づいて、AI に対して責任あるアプローチをとることが不可欠であると私たちは考えています。Google は、AI 原則をどのように実践しているかについて、事例を詳しく掘り下げたレポートを毎年発表しています。この取り組みは、AI がより高性能になり、ユーザーや新しい技術用途から学んだことを共有するために続けています。
情報の評価
多くの人にとって最も気になる分野のひとつに、誤情報があります。それは、Google にとっても同じです。ジェネレーティブ AI により、新しいコンテンツの作成がこれまで考えられないほど簡単になりましたが、同時にオンライン上の情報の信頼性についての疑問も生じています。Google では、オンラインの情報を評価するツールを開発し、提供しています。今後数か月以内に、Google 検索に「About this image (この画像について ) 」機能を追加する予定です ( 米国で英語のみ ) 。「About this image」は、同様の画像が初めて現れた時期や場所、ニュースやソーシャル サイトなどオンラインのどこで見られたかなどといった役立つコンテキストを提供します。今年後半には、「About this image」が Chrome と Google レンズで利用できるようになります(日本対応は未定)。
AI 原則の実践
AI 原則を製品に適用すると、大胆でありつつも責任を持って取り組むことは潜在的に対立することがわかります。たとえば、唇の動きと一致させながら専門家が話者の声を翻訳する実験的なビデオ吹き替え AI サービス「Universal Translator」は、学習理解力を高める大きな可能性を秘めています。しかしながら、悪意ある人に渡った場合にリスクが生じるため、Google は悪用を制限する安全対策を講じたサービスを構築し、許可されたパートナーのみがアクセスできるようにしました。
AI 原則に忠実であるための別の方法は、イノベーションを活用して新たな課題に対処することです。たとえば、Google は、業界ではじめて大規模言語モデル ( LLM) を使用して敵対的テストを自動化した企業のひとつです。これにより、テストの速度、品質、範囲が大幅に向上し、セキュリティ専門家がより困難なケースに集中できるようになりました。誤情報に対処するために、電子透かし、メタデータ、その他の技術における新しいイノベーションを最新の生成モデルに間もなく統合する予定です。また、合成音声を検出するツールも進歩しています。AudioLM の取り組みでは、独自の AudioLM モデルで合成音声をほぼ 99% の精度で検出できる分類器をトレーニングしました。
社会全体で取り組む
Google は、責任を持った AI の構築には、研究者、社会科学者、業界の専門家、政府関係者、クリエイター、パブリッシャーそして日常生活で AI を使用している人々と協力した包括的な取り組みが必要だと考えています。
Google は、社会により広く影響を与えるために社内のイノベーションを他者と共有しています。
Perspective API は、オンライン コメントにおける有害性を軽減するために Jigsaw の研究者によって開発されました。現在、I/O で言及されたすべてのモデルを含む LLM にこの技術を適用しており、学術研究者は Perspective API を活用して、OpenAI や Anthropic のモデルを含む主要な LLM で使用される業界標準の評価を作成しました。
Google は、現在も将来も、誰もが活気に満ちたウェブ エコシステムの恩恵を受けることができると信じています。これをサポートするために、私たちはウェブ コミュニティと協力して、パブリッシャーにコンテンツの選択と管理を提供する方法に取り組んでまいります。
AI がエキサイティングな分野である理由のひとつとして、あらゆる場所で人々と社会に貢献できる可能性が明白で、責任を持った開発と利用が不可欠だということが挙げられます。AI の進歩に伴い、多くのことが変化し進化しており、より多くの人々が AI を体験、共有、開発、使用しています。Google は研究や経験を通して、ユーザーやコミュニティから常に学び、その学びをアプローチに取り入れています。今後に向けて、私たちが成し遂げられることは多くありますが、同時に解決していかなければならないこともたくさんあると考えています。