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Japan Blog

Exposure Notifications System のアップデートについて



今年 5 月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止に取り組む世界中の公衆衛生機関を支援する目的で Google と Apple は Exposure Notifications System (濃厚接触の可能性を検出するシステム、以下 ENS ) を公開しました。ENS は、公衆衛生機関が同システムの活用を通じ、利用者のプライバシーを保護しながら従来の疫学的追跡調査を補完・強化するアプリを開発・提供することを支援します。これまでにアフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米、南米の 16 の国と地域の公衆衛生機関が ENS を活用したアプリを提供しており、現在、更なるアプリが開発中です。

日本では 6 月に厚生労働省が 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)  を公開しています。一方、米国では人口の約 45 %を占める 20 の州と準州において ENS を用いたアプリの活用が現在検討されており、今後数週間以内にその一部が公開される予定です。先日、公衆衛生試験所協会 (Association of Public Health Laboratories、APHL) が、米国の全州を対象に(ENS で使用する) Bluetooth の鍵を管理するためのサーバーをホストすることを 発表 しました。これにより ENS を用いたアプリを利用している場合、州をまたいで移動しても通知を受け取ることが可能になります。

Google では、世界中の公衆衛生機関や様々な分野の専門家から寄せられたフィードバックに基づき、技術とさらなる透明性の向上のために ENS の改善を行っています。引き続き、感染症拡大防止策として ENS を採用するか否かは公衆衛生機関の判断に依りますが、今後もお寄せいただくご意見を基により良いシステムの開発に注力してまいります。以下は、すでに公開した変更及び、今後予定しているアップデートです。

Exposure Notification API の改善

Exposure Notification API を 5 月に正式公開して以来、プライバシーを保護しながら 本技術がより強力に感染症拡大防止策をサポートできるよう、多数の公衆衛生機関と協議を重ねてきました。そのフィードバックに基づき、以下のようなアップデートを実施しました。

  • 濃厚接触が検出された場合、API からの技術的情報に基づき公衆衛生当局がリスク レベルをより柔軟に判断できるようにしました。
  • 端末毎の Bluetooth の調整値(キャリブレーション値)を更新し、付近の端末を検出する精度を向上させました。
  • ENS を用いたアプリを提供する各国政府からの要望に基づき、複数の国家間での相互運用をサポートするように API を更新しました。
  • 公衆衛生機関がアプリをより効率的に開発できるよう、アプリの動作安定性を高める機能を強化し、開発者の検証作業を支援するための機能を追加しました。
  • 一般利用者向けに、わかりやすさ、透明性、操作性を高めるための更新を実施しました。例えば、Android 設定ページの上部に「濃厚接触の可能性の通知」に関する設定を表示し、簡単に オン / オフ できるボタンを追加したほか、「濃厚接触の可能性の通知」機能がオンになっていることを知らせるリマインダーが毎週表示されます。
  • 更に Android 設定画面内に表示される項目名を「濃厚接触の可能性の確認」から「アプリからの接触確認リクエスト」に変更しました。本項目はアプリが陽性者の情報を取得して端末内の情報と照合した日時を表示しています。実際の接触確認は、必ず接触確認アプリを利用して下さい。

技術ガイダンスと透明性

公衆衛生機関と開発者から寄せられた ENS の仕組みに関するより技術的なガイダンスを求める声にお応えするべく、以下の資料をさらに公開しました。

  • 認証 サーバーに関する参考文書: 新型コロナウイルス感染症の検査で陽性とユーザーが報告した場合に、テスト結果を検証するサーバー構築のためのガイダンス。公衆衛生機関向け資料。
  • 実装コード: Exposure Notification API の動作を解説する資料。
  • テレメトリ設計仕様: ENS が適切かつ安全に機能していることを確認するために Google が参照している、匿名化された端末の利用状況データについて解説した資料。

ENS の継続的な改善に伴い、今後も追加の技術リソースの公開を予定しています。

役立つ情報とプライバシー保護

The Exposure Notifications サイトでは、ENS に関する詳細や技術リソース及び最新のアップデートが確認できます。

ENS の主要なプライバシー保護機能は、以下のとおりです。

  • 濃厚接触の可能性の通知を受け取るかどうかは、ユーザーであるあなたに決定権があります。デフォルト(初期設定)ではこの機能はオフになっています。
  • この ENS は端末の位置情報を一切利用しません。
  • あなたの個人情報は、Google、Apple、他のユーザーに見られることはありません。
  • ENS を利用できるのは公衆衛生機関のみです。

また、Android 端末で ENS を用いたアプリを使用する場合に、「位置情報設定」をオンにする必要がある理由についてご質問を頂きましたので、ここにその理由と Android の位置情報の設定方法について説明します。

まず大前提として、濃厚接触の可能性を検出するシステム(ENS)およびこのシステムを使用するすべてのアプリは、端末の位置情報を使いません。2 台の端末が接近したかどうかは、端末の位置情報ではなく Bluetooth の信号を使って検知するため、いずれの端末においても位置情報は使用されない設計になっています。一般的に Bluetooth の信号をスキャンする場合、必ずしも場所に関する情報が明らかになるわけではありません。ただ、使い方によっては、端末の位置情報を推測するような利用も可能です。たとえば、ショッピング アプリがある店内に固定されている Bluetooth 信号をスキャンによって検出した場合、そのアプリはユーザーが店舗に訪れたことを推測することができます。そのような利用を考慮に入れた上でプライバシー保護の観点から、2015 年に Android OS を設計した際には、端末の位置情報設定がオンにならない限り Bluetooth スキャンが行えないように変更しました。当時、Bluetooth スキャニングが新型コロナウイルス感染症のパンデミック抑制に活用されるようになるなど、誰一人予想することはできませんでした。

Android の次期バージョンでは、ENS が含まれる形でのアップデートを予定しています。まもなくリリース予定の Android 11 では、ユーザーは端末の位置情報設定をオンにすることなく ENS を用いたアプリが利用できるようになります。この変更は ENS についてのみ実施するものであり、その理由は、システム自体及びそれを用いたアプリが Bluetooth スキャンを通じた端末の位置情報が推測できない設計であること、さらに ENS を利用するアプリは位置情報の自動収集を禁止するポリシーの対象となっているためです。その他のアプリやサービスにおいては、端末の位置情報の設定がオンになっていない限り、引き続き Bluetooth スキャンは実行できません。

現行の Android で端末の位置情報設定をオンにしていても、個別のアプリ(Google が提供するアプリを含む)に対して、ユーザーが端末の位置情報へのアクセスを許可していない場合、アプリがこの情報にアクセスすることはできません。端末の位置情報の設定は、電気のブレーカーのようなものです。オンになっている場合家全体に電気が流れますが、各部屋の照明は個別にオン/オフを切り替えることができます。ENS を使用するために端末の位置情報設定をオンにしても、特定のアプリに対して位置情報へのアクセスをオフにしている場合、このオフの設定が上書きされることはありません。端末の位置情報にアクセスできるアプリは、[設定] > [位置情報] > [アプリの権限] で表示し、設定内容を確認・変更することができます。

私たちは、今後も公衆衛生機関による新型コロナウイルス感染拡大防止のためのツール構築を継続して支援致します。さらに、フィードバックに基づき ENS の継続的な改善と、プライバシー保護が設計レベルから考慮された本技術の理解促進にも務めてまいります。