AI の力で、全国の自治体とともに拓く日本の未来:ローカル AI プロジェクトの新たな一歩
高齢化社会や労働人口の減少といった日本の社会課題に対し、AI をはじめとしたテクノロジーを活用することは、一人ひとりの生産性向上や地域社会が抱える課題解決を加速させる心強いパートナーになると私たちは考えています。Google は、日本において「AI の力で解き放とう、日本の可能性」という指針を掲げ、テクノロジーを通じた日本社会への貢献を続けてきました。その一環として、2024 年 6 月から、東京大学 松尾・岩澤研究室(以下、松尾研究室)とともに全国の自治体(基礎自治体を含む)を対象に、地域課題解決に向けた生成 AI モデルを活用したプロトタイプ開発および実証実験に取り組んでいます。
本日、この 2 年間で取り組んできた各地域におけるプロトタイプや実装事例をまとめたウェブサイトを公開しました。本サイトでは、現在進行中のプロジェクトを含めた 9 自治体の事例に加えて、自治体職員の方を主な対象にした無償デジタルスキルトレーニングの受講方法などを紹介しています。
日本の地域課題を解決する「Google × 東京大学松尾・岩澤研究室」における自治体の事例
2026 年 9 月現在、40 を超える自治体の皆様と対話を重ね、雇用、健康、福祉、サステナビリティ、行政効率化など、多岐にわたる地域課題解決の支援および人材育成支援を行なっています。全国の自治体の皆様とともに開発・実証してきた、生成 AI 活用の具体的な先進事例をいくつかご紹介します。
神奈川県:SDGs パートナーの最適マッチング(サステナビリティ・産業)
神奈川県では、SDGs 普及促進のために企業同士を結びつける「神奈川 SDGs パートナー制度」を推進しています。その一環として、従来は県職員が手作業で行っていたマッチング業務に AI プロトタイプを導入し、AI が企業の強みやニーズを分析することで、適合性の高い企業同士や、人間では気づきにくい異業種間の新たな連携を多彩に提案できるようになり、マッチングの質向上と職員の負担軽減を両立させています。取り組みの様子はこちらの動画でご確認いただけます。
京都府:AI コンシェルジュで学び直しを最適提案(教育・キャリア)
京都府の生涯学習サイト「KYO育tv.」では、Gemini を活用した AI コンシェルジュを実装しました。府民が対話形式で 24 時間いつでも気軽に相談でき、利用者の年齢や興味、目的に合わせた最適な学習プログラムを提案します。相談へのハードルを下げ、キャリアアップや学び直し(リスキリング)を支援しています。
広島県:生成 AI を活用した食生活診断で県民の健康を支援(健康・食生活)
県民の健康づくりや生活習慣病予防に向け、AI を活用した食生活タイプ診断ツールのプロトタイプの開発を進めています。本ツールでは、利用者がいくつかの質問に回答することで、一人ひとりの食生活や生活スタイルに応じた診断結果と健康的な食生活に向けたアドバイスを提示します。生成AIを活用することで、様々なパターンの診断コンテンツ作成にかかる負担を削減し、質の高い健康支援サービスの提供を目指しています。
北海道南富良野町:SNS 連携の AI チャットで観光の「今」を案内(観光)
町の公式観光情報に加え、X(旧Twitter)や観光事業者の発信を AI が参照し、観光客の質問にチャット形式で即時回答するプロトタイプを開発しています。Webサイトだけでは拾いきれない“今の情報”を届けることで、観光客の利便性向上と町内回遊の促進を目指します。
島根県美郷町:対話型 AI で行政情報の「探せない」を解消(住民サービス)
町公式 HP からの情報取得を容易にするため、対話型 AI と検索基盤のプロトタイプを構築しました。自然言語の質問に対して HP 情報を元に AI が回答と根拠ページを提示します。目的の情報にすぐ到達できる体験を提供し、限られた職員体制の負担軽減と住民サービスの向上の両面で期待しています 。
大分県 HP の AI チャットボット実証研究(住民サービス)
県 HP の情報量増加に伴う県民の検索負荷と職員の対応負荷を軽減するため、松尾研究室と共同で実証研究を実施しました。既存 HP 情報を回答ソースとすることで、膨大な FAQ 準備なしで実用的な回答精度を確保しました。効率的な AI 運用の可能性とバランス設計の知見を得ました。
山口県:地域企業のDX相談業務を生成AIで高度化へ(産業)
山口県(Y-BASE)は、年間 180 件に上る地域企業の DX 相談をすべて人手で対応しており、コンサルタントによる提案の質やスピードのバラつきが課題でした。そこで AI によるコンサルタント支援のプロトタイプを開発しました。過去の支援ナレッジを学習した AI が、最適な類似事例や補助金を瞬時に特定し、面談時の的確なヒアリングや提案を自動生成することで、相談対応の即時化と品質の均一化を目指します。
福井県:ものづくりを支える技術営業・案件開発に関する商談支援、ベテランの暗黙知を実践の場へ(産業 DX )
繊維や眼鏡など、高度な技術力を誇る福井県のものづくり。しかし、その卓越した「技術価値」を顧客の課題に合わせて提案する商談ノウハウは、ベテランの暗黙知となっていました。そこで、AI によるリアルな顧客シミュレーターのプロトタイプを構築しました。若手がベテランの「技術を価値に変えて語る勘所」を実践の中で学び、培ってきたものづくりの真価を次世代へとつないでいきます。
京都府:王道と穴場の 2 案を提案する対話型の旅程生成 AI(観光 DX・地域課題解決)
京都市内の一部エリアへの観光客集中が課題となる中、京都府全域への周遊を促す対話型の旅程生成 AI プロトタイプを構築しました。旅行者の日数や移動手段、好みをチャットでヒアリングし、「定番の王道プラン」と「混雑を避ける穴場プラン」の 2 案を同時に提案します。旅行者一人ひとりの条件に合わせた行程をその場で柔軟に作成することで、特定エリアの混雑緩和と、府内各地への新たな人の流れの創出を目指します。
各自治体との対話から得た学び
また、本プロジェクトを通じ、これまで全国多数の自治体様と対話や開発を重ねてきた中で、地域の課題解決に AI を効果的に活用するために何が重要なのかという学びが見えてきました。
- 技術先行ではなく、「地域の目指す姿」から逆算する
AI を活用する上で大切なのは、「AI で何ができるか」ではなく、「自分たちの地域がどうありたいか、何を解決したいか」という目的や課題が起点にあることです。新しく話題になる技術が出てくると、技術先行で AI の使い道を探してしまいがちですが、地域の目指す姿や切実な課題から逆算して初めて、AI は真の力を発揮します。
- 地域の文脈(現場固有のデータ)と安全に連携する
単なるツールの配布で終わらせず、「地域の文脈(=現場固有のデータ)」に連携することです。もちろんデータ連携にはセキュリティへの慎重な配慮が必要です。Google では、Gemini Enterprise 環境において、入力データを AI モデルの学習に一切使用しません。安心で安全な環境下で地域の独自データと結びついてこそ、AI は汎用ツールから「地域特化の頼れるパートナー」へと進化します。
- 地域の文脈や課題を深く理解する「人」の存在
どれほど高度な技術があったとしても、それを使いこなす「地域の文脈や課題を深く理解している人材」がいなくては、地域の課題解決はできません。そして、大切なのは必ずしも高度な専門家を外部から連れてくることではありません。現場の業務や住民の想いを誰よりも知る自治体職員の皆さま自身が AI スキルを身につけることで、地域の課題解決は飛躍的に加速します。
Google は、これからも AI を活用して、日本全国の地域社会が抱える課題解決と、持続可能な未来の創造をサポートしてまいります。この取り組みが、全国の自治体の皆様の新しい挑戦やアイデアのきっかけの一助となり、テクノロジーと地域の温かい文脈による新しい未来が作り出される事を楽しみにしています。