Google Arts & Culture、福田美術館の名画のつづきを Veo で表現
Google Arts & Culture の使命は、世界中のアートや文化を、誰もが、どこにいても鑑賞できるようにすることです。アートには、人々をつなぎ、インスピレーションを与え、そして静かで深い思索を育む力があると私たちは信じています。
たとえば、歌川広重の「東海道五十三次之内 庄野 白雨」の前に立ってるところを想像してください。静かに降り注ぐ雨の中、険しい山の斜面を登り続ける人々の姿を眺めています。この作品を前に、こんな問いが浮かび上がります。「もし、この絵の中で実際に雨が降り出し、描かれた旅人たちが動き続けるとしたら?」
この、専門家や技術者を巻き込む学芸的な問いかけこそが、今回のプロジェクトの原点です。このプロジェクトでは、静止した芸術作品の鑑賞体験そのものを深く掘り下げ、テクノロジーを駆使して「絵の続き」を解き明かすことを目指しています。
この度、京都の福田美術館と協力し、Google の動画生成技術である Veo を福田美術館のコレクションに活用するプロジェクト「Moving Paintings」を公開しました。
このプロジェクトでは、福田美術館のコレクションから 24 の名画に Veo を活用し、静止画である作品に動きをもたらし、作品と鑑賞者の間に新しい対話を生み出します。私たちの意図は、単に動きを加えることではなく、作品の隠された物語を解き放ち、静的な美しさを生き生きとした物語へと変容させ、これまでとは異なる鑑賞体験へのデジタルな扉を開くことです。
鑑賞者は、ARTISTIC と RELISTIC の 2 モードを選択できます。ARTISTIC では、オリジナルの作風に忠実に踏襲した世界観で、作品の中で展開される物語にそのまま没入できます。このモードでは、絵画などのシーンに描かれた「動きの気配」——降る雨、通り過ぎる旅人、はためく旗といった要素——を読み解き、それらを具体的な動きのベクトル(方向や強さのデータ)に変換します。そして、Veo がその情報を統合し、滑らかで高精細な映像を生成します。その結果、構図に暗示されていた物語が、作り手の意図通りに、そして明確な映像として展開されます。
REALISTIC モードでは、作家が当時目にしたであろう実際の光景を想像させる、写実的な世界を提供します。このモードでは、文脈や周囲の環境として「あり得たであろう光景」を、そのもっともらしさに焦点を当てて再現します。Veo は、作品を「種」として、その絵のインスピレーション源となったかもしれない写実的な世界を予測し、極めて忠実な映像を生成します。
傑作と直接向き合う特別な体験に取って代わるものは決してありませんが、これらの不朽の名作に動きという息吹を吹き込むことで、作品とその作家、そして鑑賞者の間に、さらに深いつながりを築くことができると信じています。ぜひ、この物語の世界に足を踏み入れ、より近くで作品を感じ、まったく新しい方法でアートを体験してください。
「Google Arts & Culture とのコラボレーションを通じて、何世紀も前に描かれた絵画に命が吹き込まれ、当時の画家たちが思い描いたであろう光景を現代の私たちが体験できることは、誠に画期的なことです。このテクノロジーを活用することで、特に若い世代をはじめとする、より多くの人々が、時代を超えて受け継がれてきた傑作に触れるきっかけになることを願っています。」 - (福田美術館 副館長 竹本 理子)