Gemini Robotics 2 が実現するロボットの全身知能

2026年 7月 30日


Carolina Parada

VP Robotics, Google DeepMind


足から指先まで — ロボットに高度な全身制御、器用さ、そしてチームワークを学習させ、幅広い複雑なタスクの完遂を目指して

何十年もの間、私たちはロボットが日常生活に自然に溶け込み、私たちの手助けをしてくれる未来を夢見てきました。そして今、そのビジョンは大きく前進しようとしています。

多くのロボットは、限定的で反復的なタスクのために事前にプログラムされているか、遠隔操作されるものです。そのため、自ら学習したり、予測不可能な環境に柔軟に適応したりする能力には欠けています。さらに、あるロボットが学習したスキルを別の機体へ移転することは、依然として非常に大きな課題です。大小さまざまなロボットが、現実世界の複雑な課題を大規模に解決していくためには、自ら思考し、行動し、知的かつ安全にタスクを完遂できるよう支援する AI モデルの存在が不可欠です。

これまでに私たちは、 Gemini Robotics を通じて、Gemini のマルチモーダルな理解力が現実世界の行動をどのように促進できるかを示してきました。そして 本日 、次世代の汎用的なロボットを支える頭脳となる Gemini Robotics 2 を発表します。文字通り新たな一歩を踏み出すこの大きな飛躍により、高度な全身制御、優れた巧緻性(手先の器用さ)、そして複数のロボット間の連携が可能になります。

Gemini Robotics 2 により、ロボットはすべての動作について推論できるようになり、幅広いタスクの実行を可能にします。例えば、ヒューマノイド ロボットが歩き、しゃがみ、背伸びをし、物体を操作して、散らかった部屋を片付けるといったことも可能になります。さらに、他のロボットとチームを組んで、作業をより早く終わらせることもできるのです。そして、この深く高度な知能は、オンデバイスのローカルで動くだけでなく、 わずか数時間で新しい機体にも適応します。

私たちは、以下の 3 つの高性能なモデルを通じて、これを実現しています。

  • Gemini Robotics 2 : 最も高度な視覚・言語・行動 (VLA) モデルです。視覚と自然言語の指示をロボットの運動制御に変換し、実際のアクションを実行します。このモデルは、足先から指先までヒューマノイド全体を制御できるほか、他の双腕ロボットの制御も可能です。また、多指ハンドやグリッパーにおいても、これまでにないレベルの巧緻な操作を実現します。
  • Gemini Robotics ER 2 : 私たちが提供する最も高性能な ER (embodied reasoning)です。エージェントとして機能する 視覚・言語モデル (VLM) であり、ロボットが人間と対話し、物理世界を理解し、数分間にわたる複数ステップ(多段階)のタスクの計画を立てることを可能にします。さらに今回、複数のロボットがチームとして連携して作業する機能も新たに導入しました。
  • Gemini Robotics On-Device 2: ロボットデバイス上でローカルに実行できるように最適化された、最も効率的な 視覚・言語・行動 (VLA) モデル です。このモデルは、 数時間 のデータ学習だけで、まったく新しい機体にも迅速に適応できるようになりました。

推論モデルである Gemini Robotics ER 2 は、 本日より Google AI Studio でご利用いただける ほか、Gemini Enterprise Agent Platform にて プライベート プレビュー版として提供を開始します。VLA モデルおよび On-Device モデルについては、 現在早期アクセス パートナーの皆様に提供しています こちらからご登録ください。これらのモデルをお使いのハードウェアに導入する方法については、Developer Blog をご覧ください。

動くヒューマノイド: 全身の制御を可能に

私たちの暮らす世界は、人間の動きに合わせて作られています。狭く散らかった空間では、手を伸ばしたり、かがんだり、バランスをとったりすることがしばし必要です。これまでのモデルでは、ヒューマノイドの上半身をコントロールして卓上のタスクをこなすことにとどまっていましたが、 Gemini Robotics 2 は物理的な AI の可能性を全身の動きへと広げます。

今回初めて、モデルがヒューマノイド ロボット全体を制御し、人間の意図を知的な全身制御へと変換できるようになりました。例えば、Apptronik’s Apollo 2 を制御する際、「じょうろを一番下の棚の緑色のゴミ箱に入れて」とお願いしてみると、Apollo は指示を処理し、テーブルまで歩いて行ってじょうろを手に取り、棚まで数歩進んで、目的地に正確に配置します。ロボットの動作速度にはまだ改善の余地があるものの、これは全身の協調を必要とする、より複雑で現実的なタスクを完了するために必要なスキルに向けた重要な一歩となります。

ハンドやグリッパーに高度な巧緻性を

家庭や職場で真に役立つ存在となるためには、ロボットには繊細さが求められます。 Gemini Robotics 2 は、ハンドやグリッパーといったエンドエフェクタの違いに関わらず、これまでにないレベルの物理的な巧緻性を引き出し、ロボットの有用性を飛躍的に高めます。

このモデルは現在、Apollo 2 ロボットに搭載された、5 本指で 22 自由度を持つ SharpaWave hand を制御し、結び目を作ったり、ジップロックの袋を閉じたりといった繊細なアクションを完了できるようになりました。また、Franka Duo platform で標準的な 2 本指の平行グリッパーを操作し、隙間なく箱に詰め込む作業といった複雑で巧緻なタスクを実行することも可能です。人間と同レベルの器用さを達成するために、私たちは今後も精度と速度の向上に取り組んでいきます。

エージェンティック推論とマルチロボット連携による、高度なタスクへの挑戦

現実世界のタスクの多くは、長い時間をかけて複数のステップを踏む必要があります。この複雑さを管理するために、私たちの エンボディド・リーズニング モデル である Gemini Robotics ER 2 がロボットの高次な頭脳として機能し、ユーザーの指示を処理して人間と対話します。部屋の状況を観察し、タスクの完了に必要な手順を推論した上で、 視覚・言語・行動 (VLA) モデル と連携して実際のアクションを実行し、完了するまで進捗状況を追跡します。この仕組みにより、ロボットは複雑な多段階のタスクを実行し、あるステップで失敗しても自己修正し、初めて遭遇する状況や目標にも適応できるようになります。

今回のアップデートでは、数分間にわたり何百もの意思決定を伴うような、より長い一連のタスクをロボットがより確実に実行できるようにしています。 Gemini Robotics ER 2 は、タスクの開始と終了を理解し、重要なイベントが発生した瞬間を正確に特定できるようになりました。これは、進捗状況の把握において飛躍的な進歩を示すものです。

さらに、マルチロボット連携機能も導入しました。これにより、異なる種類のロボットが互いにコミュニケーションを取りながら共同で作業できるようになります。結果として、1 台のロボットだけでは対応できないような複雑なワークフローも解決可能になるのです。

あらゆるロボットに迅速に適応するオンデバイス モデル

多くのロボット アプリケーションは、ネットワークの遅延やインターネット接続なしで動作する必要があります。 Gemini Robotics On-Device 2 は、まさにこのような制約に対応するために構築されました。これは、ロボットデバイス上でローカルに実行できるよう最適化された、私たちが提供する中で最も効率的な 視覚・言語・行動 (VLA) モデル です。

このモデルはネイティブにマルチ エンボディメント(複数の機体への対応)を実現しており、Gemini Robotics 1.5 から高度な「動作移転」技術を受け継いでいます。そのため、新しい双腕ロボットの機体に対しても、通常 200 件未満の例を提示するだけで、 わずか数時間 の適応時間で対応できるようになりました。この機能は、形状やセンサー、自由度がまったく異なる新しい機体であっても機能します。下図は、DexmateSO101 そして Trossenプラットフォームが多様なタスクを実行している様子を示したものです。

安全で責任あるロボティクスに向けた取り組みの推進

ロボティクス研究において、安全性は最も重要な基盤です。ロボットがより高度な物理的機能を持つようになるにつれ、私たちはエンドツーエンドの安全性とアライメントの確保に尽力しています。私たちはリリースを重ねるごとに、従来の物理的な安全対策と、堅牢な AI セーフティ フレームワークを組み合わせた多層的なアプローチを採用してきました。

Gemini Robotics 2 は特に、現実世界の不確実性を乗り越え、人間と共に働くためのロボティクスにおける安全性を前進させるよう設計されています。

今回、エージェント的な安全性のオーケストレーション(統合的な調整)と不確実性の解消を評価する新たなベンチマークとして、 ASIMOV-Agentic を導入します。例えば、これは エンボディド・リーズニング のエージェントが、VLA からの安全ではないツールの呼び出しを拒否する能力を測定します。さらに、タスクが実行可能かどうかを予測し、不確実な場合には人間による介入を積極的に要求するエージェントの能力も評価します。

さらに、強化された身体性推論を備えた Gemini Robotics ER 2 は、安全制約の順守や、人間への接近に関するベンチマークにおいて、私たちが提供するこれまでで最も安全なロボティクス モデルです。人間が近くにいることをより正確に検知し、安全のためのツール呼び出し(セーフティ ツール コール)を作動させて、誰かが近づきすぎた場合にはロボットを安全に停止させます。これは、協働ロボットの安全基準における重要な要件です。詳細については、Gemini Robotics 2: Safety Technical Reportをご覧ください。

汎用的なフィジカル AI の実現に向けて

Gemini Robotics 2 は、物理世界における AGI(汎用人工知能)の実現に向けた、非常に重要なマイルストーンとなります。ロボティクスの真の可能性を解き放つためには、単一タスクの自動化から脱却し、汎用的な知能へと移行する必要があります。この中核となる知能を構築することで、人間と共に働きながら複雑な課題を解決できる AI を、物理世界で実現することが私たちの目標です。