Gemini 3.5 Flash Cyber を発表
Google は長年にわたりサイバーセキュリティ分野に投資し、世界中のコードを安全に保つための自動脆弱性発見技術を牽引してきました。例えば、 Google のコードセキュリティエージェントである CodeMender は、ソフトウェアの重大な脆弱性を自動的に発見し、修正までのサポートを行います。しかし、AI エージェントの能力が向上し、防御側が修正するよりも早く脆弱性を発見できるようになる中、この世界的な脅威に対処するには、高度な能力を備え、導入しやすく、大規模に展開できるアプローチが必要不可欠です。
本日、防御の最前線に立つ皆さまをさらに強力にサポートするため、 Gemini 3.5 Flash を基盤とした、サイバーセキュリティ特化型の軽量モデルの Gemini 3.5 Flash Cyber を発表します。脆弱性の発見や検証、そしてパッチ適用を迅速かつ効率的に行えるようファインチューニングされており、 この分野のタスクにおいて、従来の Gemini Flash モデルをしのぐ優れた効果を発揮します。
Flash シリーズのパフォーマンスと効率性は、サイバーセキュリティモデルの基盤として理想的です。Flash の強みを活かすことで、Gemini 3.5 Flash Cyber は、大規模でコストのかかるサイバーセキュリティモデルに代わる、費用対効果が高く極めて有能な選択肢となります。
このテクノロジーが持つ防衛と攻撃の双方に利用可能なデュアルユースな性質を考慮し、私たちは Gemini 3.5 Flash Cyber の展開において意図的に慎重なアプローチをとっています。まずはアクセスを限定したパイロットプログラムの一環として、近日中に、政府機関および 一部の Trusted Tester に限定して CodeMender を通じた提供を開始します。その後、徐々に展開を拡大する予定です。これにより、悪用のリスクを抑えつつ、現場の担当者が攻撃者よりも早く重大な欠陥を見つけて修正できるようになります。
これとは別に、Gemini Enterprise Agent Platform を通じて、一般提供されている Gemini モデルをお使いのお客様も、CodeMender の基盤機能を直接ご活用いただけるようになります。
探索空間の課題:コードセキュリティにおける軽量モデルの優位性
根深い欠陥を見つけ出すには、コードが実行される可能性のある無数のルート(実行探索空間)をくまなく調べる必要があります。 しかし、巨大な言語モデルをその都度呼び出していると、コストや時間がかかりボトルネックになりかねません。 エージェントが大規模なコードベースをスキャンし、多数のコードパスを分析するような状況では、Gemini 3.5 Flash Cyber のような軽量モデルがまさに理想的です。
CodeMender は Gemini 3.5 Flash Cyber を複数回呼び出すように設計されています。これにより、エージェントは圧倒的に多くのコードパスを分析し、脆弱性をくまなく発見・検証できるようになります。そして、サブエージェントたちがそれらの結果をまとめ、最終的に質の高い単一のレポートを作成してくれます。
コスト効率とスピードを兼ね備えているため、Gemini 3.5 Flash Cyber は、高頻度なスキャンや時間制約の厳しいリリースプロセスにもスムーズに組み込めます。 また、大規模なコミット スキャン パイプラインへの導入も簡単です。
Gemini 3.5 Flash Cyber Gemini のベンチマーク:より大規模なモデルに代わる効率的な選択肢
私たちは、Gemini 3.5 Flash Cyber を現実世界の何百もの脆弱性を用いて AI エージェントを評価する CyberGym ベンチマークを含む様々なベンチマークでテストしました。Gemini 3.5 Flash Cyber の低コストという強みを活かし、1 つの最終レポートを作成するために CodeMender が最大 5 回までモデルを呼び出せるように設定したところ、エージェント全体として、はるかに大規模なモデルに匹敵する優れたパフォーマンスを CyberGym 上で達成しました*。
*競合他社の結果は、各プロバイダーが自己申告したスコアに基づいています。
さらに、CyberGym の枠を超え、安全性のガードレールを取り外した状態でのストレステストも実施しました。Google の Google’s Big Sleep チームが独自に構築したこの評価は、Chrome や Safari といった世界で最も複雑なコードベースの中に潜む、重大で見つけにくい脆弱性を発見することに焦点を当てています。このテストにおいて、Gemini 3.5 Flash Cyber は、従来の 3.5 Flash や 3.6 Flash を大幅に上回る成績を収めました。
Big Sleep 評価での成功率(pass@1)
Gemini 3.5 Flash Cyber は、Google Chrome の本番環境におけるコミット スキャン パイプラインでも評価を行いました。このテストで使用された脆弱性は一般には公開されていないため、Gemini や他社モデルの学習データに混入していない、純粋なベンチマーク環境が保証されています。
結果として、Gemini 3.5 Flash Cyber は 3.5 Flash と比較して大幅な性能向上を示しました。なお、Claude Opus 4.6 以降の最新の競合モデルは、組み込まれた安全性のガードレールによりタスクの実行を拒否するため、結果には表示されていません。
Chrome のコミット スキャン パイプラインでの成功率(pass@1)
さらに、Gemini 3.5 Flash Cyber は、従来の 3.5 Flash や Claude Opus 4.6 と比較して、より多くの固有の脆弱性を一貫して発見しました。非常に複雑な V8 JavaScript Engine を対象に、決められた回数の呼び出しでテストを行ったところ、従来の 3.5 Flash が 47 件、Opus 4.6 が 36 件だったのに対し、Gemini 3.5 Flash Cyber は 55 件の固有の確認済み問題を発見しました。この中には、他の 2 つのモデルが見逃した 10 件の重大な問題も含まれています。
一般的なセキュリティモデルは、同じ問題を繰り返し見つけるループに陥りがちです。 しかし強力なモデルは、より広い網を投げるように機能し、多様な問題を見つけ出すことができます。
呼び出しの回数を増やすほど、Gemini 3.5 Flash Cyber は休むことなく新しいコードパスを探索し、次々と未知の脆弱性を発見し続けることが確認されています。
Google における現実世界での応用と防御のスケールアップ
ベンチマークの結果は、ほんの一部に過ぎません。CodeMender に搭載された Gemini 3.5 Flash Cyber は、すでに Chrome、Android、Cloud、Ads、YouTube を含む Google 内部のコードベースにおいて、日々脆弱性を発見し修正しています。
軽量モデルだからこそ実現できる圧倒的な発見スピードは、確かな成果をもたらしています。
例えば、Google の Cloud Vulnerability Research チームは、Gemini 3.5 Flash Cyber を活用して、かつてない速さで自社システムを保護しました。わずか 2 時間で公開 API のリモートコード実行を発見し、さらに機密性の高い本番サービスにおけるメモリ破損の脆弱性も特定しました。その後、ASLR(アドレス空間配置のランダム化)や W^X(メモリの書き込みと実行の同時許可を防ぐ技術)といった標準的な緩和策をすり抜ける、100% 確実に機能するリモートコード実行のエクスプロイト(攻撃コード)を自動生成まで実現しました。
Wiz や Cloud CISO Security Engineering のテスターから寄せられた初期のフィードバックでも、Gemini 3.5 Flash Cyber が従来の 3.5 Flash モデルから飛躍的に能力を向上させていることが確認されています。
世界中のセキュリティ担当者をサポート
ソフトウェアセキュリティ分野における Google の長年の経験は、AI 開発においても大きな強みです。 70 万件以上のオープンソース脆弱性を網羅するデータベース OSV.dev や、10 年にわたる OSS-Fuzz の運用実績が、高品質な脆弱性の特定を支えています。
この膨大な知見があるからこそ、私たちは単なる人工的なサイバーセキュリティの例題にとどまらず、実際のセキュリティ専門家がどのように考え、どう動くのかをモデルに学習させることができます。私たちのモデルは、業界標準のツールを使いこなし、Chromium のような大規模プロジェクトの何百万行ものコードを読み解き、何時間もの継続的で深い分析を必要とする複雑なセキュリティタスクに自律的に取り組む方法を学んでいます。
Gemini 3.5 Flash Cyber を組み込んだ CodeMender を通じて、有能かつ拡張性とコスト効率が高いアーキテクチャをお届けします。