Gemini for Science: AI の実験とツールで新たな発見の時代を切り拓く

2026年 5月 20日

Google Antigravity の新しい Science Skills や、Google Labs における 3 つの新しい実験的ツールによって実現する未来の科学的発見の可能性をご紹介します。これらのツールは、Co-Scientist、Alpha Evolve、Empirical Research Assistance、NotebookLM を基盤に構築されており、科学的探究プロセスの要となる各ステップを加速させるよう設計されています。


Pushmeet Kohli

Chief Scientist, Google Cloud and Vice President, Google DeepMind

Yossi Matias

Vice President and General Manager, Google Research


Person using a microscope with "Gemini for Science" text and star icon.

何世紀もの間、科学は人類の進歩における最大の原動力であり続けてきました。 Google のミッションは、この進歩を加速させるためのツールを開発することに深く根ざしています。私たちは、これからの新しい発見の時代を切り拓くのは、特定の領域だけに特化した小規模なモデルではなく、あらゆる科学分野の研究者を強力にサポートする汎用的な AI エージェントであると信じています。

こうした背景から、私たちは、科学的な探究の規模と精度を大きく拡張するために設計された、科学ツールと実験的機能のコレクションである Gemini for Science を発表します。

人間のアイデアを何倍にも高める原動力

現在 、科学界はあるパラドックスに直面しています。人類全体の知識が急速に拡大しているため、個々の科学者がその全体像を把握するとがますます困難になっているのです。科学的なブレイクスルーの多くは、データ間のクリエイティブな結びつきを見つけることから生まれますが、これを手作業で行うには数週間、あるいは数ヶ月もの時間がかかってしまうことがあります。「膨大なデータに目を通すだけで日が暮れてしまう…」そんな経験はありませんか? AI はこうしたボトルネックを解消し、複雑なタスクを処理することで、科学研究の力を何倍にも高める原動力となります。これにより、研究者の皆さまは、進歩の鍵を握る最も重要な課題や研究の方向性を見極め、それらの解決に集中できるようになります。

Google Labs で提供される Gemini for Science の実験的ツールには、こうしたタスクを処理するために開発された 3 つの主要なプロトタイプが含まれています。

  • Hypothesis generation (仮説生成機能、 Co-Scientist を基盤に構築): 新しいアイデアの創出は科学の中心ですが、毎年発表される何百万本もの論文をすべて読み込み、統合することは、人間の力だけでは不可能です。 Hypothesis generation は、科学的手法をシミュレートすることで、このギャップを埋めます。研究者と協力して研究課題を定義した上で、複数の AI エージェントによる「アイデア トーナメント」を開催し、仮説の生成、議論、および評価を自動で行います。また、絶対的な厳密性を担保するため、生成された主張は徹底的に検証され、クリックして参照できる引用元(出典)が必ず明記されます。
  • Computational discovery (計算科学的発見機能、 AlphaEvolve および ERA [Empirical Research Assistance: 実証的研究支援]を基盤に構築): 科学の進歩は、コンピューターを用いた計算実験で実際に検証できる仮説の数によって制限されてしまうことが少なくありません。自律的に動く研究エンジン(エージェント型研究エンジン)である Computational discovery は、何千ものコードのバリエーションを並列で生成・評価することで、この課題を解決するプロトタイプです。これにより、太陽光発電の予測や疫学といった極めて複雑な分野において、手作業では数ヶ月かかるような新しいモデリング手法の検証を、スムーズに行えるようになります。
  • Literature insights (文献インサイト機能、 Google NotebookLM を基盤に構築): 科学文献を深く理解することは、すべての研究活動において不可欠なプロセスです。 Literature insights は、膨大な科学文献を検索し、カスタマイズ可能な検索属性を持つテーブル(表)に対比形式で整理します。研究者の皆さまは、チャット機能を使って、自身で厳選した文献データ(コーパス)に基づいた詳細なニュアンスを掘り下げることができ、レポート、スライド資料、インフォグラフィック、さらには音声や動画による概要解説といった高品質な成果物を簡単に作成できます。 Google NotebookLM を活用することで、 Literature insights は複数の論文にまたがる知見の統合や、未開拓の研究分野の特定、新たな機会の発見を強力にお手伝いします。

私たちは、 本日より これらの実験的機能へのアクセスを 段階的に開始 いたします。ご興味のある方は、ぜひ labs.google/science にアクセスしてご登録ください。

個別の実験的な取り組みにとどまらず、私たちは Google Cloud を通じて、これらの高度な AI 機能を企業や組織の皆さまにもお届けしています。科学および産業分野の研究開発(R&D)向けに設計されたエンタープライズ向けのソリューションは、 現在、早期アクセス としてすでに多くのパートナー企業に導入され、実世界での成果を上げ始めています。例えば、BASF 社はサプライチェーンの最適化に AlphaEvolve を活用しており、Klarna 社は機械学習モデルの強化に役立てています。同時に、第一三共株式会社(Daiichi Sankyo)、Bayer Crop Science 社、および米国の国立研究所(米国エネルギー省の Genesis ミッションの一環)といった組織では、 Co-Scientist を導入して研究を加速させ、根源的な科学的課題への挑戦を続けています。これらのエンタープライズ向けツールは、 現在のプレビュー段階 においてもすでに極めて高い価値を実証しています。パートナーの皆さまが次々と実現しているブレイクスルーの数々には目を見張るものがあり、 今後数か月以内 に、さらに多くの組織の皆さまへと提供範囲を拡大していけることを心から楽しみにしています。

これらのツールをはじめとする成果に基づいて、すでに複数の検証論文が発表されています。 本日 、ERA および Co-Scientist の研究論文が『 Nature 』に掲載されました。

科学のためのワークベンチを

Gemini for Science の一環として、私たちは新たに Science Skills を提供します。これは、UniProtAlphaFold DatabaseAlphaGenome APIInterPro など、ライフサイエンス分野における 30 以上の主要なデータベースやツールから得られる知見を統合した特化型のパッケージです。Google Antigravity のようなエージェント型プラットフォーム上でこれらのスキルを活用することで、研究者はこれまで何時間もかかっていた構造バイオインフォマティクス(構造生物情報学)やゲノム解析といった、複雑で手作業の多かったワークフローを、 わずか数分 で実行できるようになります。

Science Skills を活用している私たちの研究チームは、すでにこの圧倒的なスピード向上を実証しています。 初期のテストにおいて 、私たちのチームが Science Skills を使って、通常であれば何時間もかかる複雑な分析を わずか数分 で完了させました。その結果、AK2 遺伝子の変異によって引き起こされる、ある希少な遺伝性疾患の潜在的な発症メカニズムに関する、これまでにない新しい知見を得ることに成功したのです。

Google Antigravity での Science Skills の詳しい使い方については、ぜひ antigravity.google/use-cases/science をご覧ください。

科学コミュニティとの共同の取り組み

科学のためのツールを責任ある形で開発し、提供していくという私たちのコミットメントは、科学界のエコシステムと手を取り合うことから始まります。私たちは、新しいシステムやツールの検証を行うため、100 以上の研究機関と提携しています。これには、肝線維症の研究におけるスタンフォード大学、薬剤耐性(AMR)研究におけるインペリアル・カレッジ・ロンドン、およびフランシス・クリック研究所との 複数年にわたる共同の取り組み などが含まれます。また、 AI が生成する知見の信頼性を担保するため、博士課程の学生から企業の第一線で活躍する研究者、さらにはノーベル賞受賞者に至るまで、幅広い専門家からなる「信頼できるテスターのコミュニティ」を構築し、実世界の複雑な課題を用いてシステムに負荷テスト(ストレステスト)を行っています。

さらに、ICML、STOC、NeurIPS といった世界をリードする主要な科学学会と連携した独自の試験的な取り組みも立ち上げています。ここでは、実験的な論文支援ツールである Paper Assistant Tool ( PAT )ScholarPeer など、 AI エージェントを活用した査読や科学的検証を行うための先駆的なツールの開発を進めています。

これらの取り組みはすべて、 Google が長年にわたり積み重ねてきた AI の進化の歴史の上に築かれています。当社の特化型 AI モデルは、すでに様々な分野で進歩を加速させています。例えば、 AlphaFold はこれまでに 300 万人以上の研究者を支援し、マラリアワクチンの開発やプラスチック分解酵素の研究に貢献してきました。また、 AlphaGenome は、科学者が病気の原因を特定する手助けをしています。これらは、研究者の皆さまが日々信頼を寄せている Google ScholarEarth EngineColabMedGemma Earth AI 、そして Gemini Deep Research といった日常的なツールと並んで活用されています。さらに、最新の Gemini Deep Think のリリースにより、複雑な科学的タスクにおけるコアモデルの能力を継続的に向上させています。これらのツールは、今や科学界のエコシステムに欠かせない重要な要素となっており、研究者が膨大な情報を整理し、大規模で複雑なデータ分析を効率的に実行できるようサポートしています。

エージェントを活用した研究の未来を皆さまと共に探求しながら、私たちは AI が科学の進歩を加速させ、人類が直面している最も緊迫した社会的課題の解決に貢献できる未来を目指して、これからも歩みを進めてまいります。

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